2012年10月16日火曜日

カラーミキシングの考察  Part3

 LEDが照明業界で実用化されるまで、全盛をきわめたCMYカラーミキシングにおける問題点は、光源にHIDランプを多用するため、HIDランプの特性である不連続且つ青色成分のほうに比重の高いスペクトルに加え、ムービングフィクスチャーの機構がきらう熱を極力、前面へ放出しないコールドミラーの影響により、赤が出にくいという点にあります。

また、CMY個々の ダイクロイックフィルターの色味の違いや、その機構の違いにより、色の混合にむらが出てしまうものがあったり、Fixture間で色のばらつきがでてしまう事なども問題となりました。さて、LED全盛の今、こうしたCMYのカラーミキシングに対し、RGBミキシングは、問題解決となったのでしょうか?


より濃い色を作れない

LEDは、RGBの3色を使って色を作り出します。これはCMYの減法混色と異なり、RGBをすべてミックスすると、理論的にはもっとも明るい白になります。最初に言われたLEDの問題点は、CMYと異なり使用されるRGB個々の色以上に濃い色を作る事が不可能な事です。しかしこれは、搭載するRGBの選択で解決する事から大きな問題とはなりません。



RGBでミックスしても白にはならない

もう1つの問題は、 RGBをミックスする事で作り出されるはずの白は実際には、美しい白にはならず、ややピンクだったり、青白い色だったり、そう簡単に白やハロゲンのランプカラーをRGBミックスで作る事ができませんでした。そうした現実に対応するため、メーカー各社はRGBに加えアンバーやホワイトのLEDを加えた4色、5色で、より正しい白を生み出す努力を重ねました。

フェードカーブの問題

今ではこの4色、又は5色の混合により、白に関してはかなり問題が改善されたものの、次に問題となったのは、なめらかなスムースフェードができず、その色の変化は、DMX制御特有のステップ変化に見えてしまう事、そして点灯する瞬間、カットインのように見える変化についても、大きな問題となりました。しかしこの問題に対しても、メーカーは各色を16ビットにすることで対応したり、フェードカーブを搭載したりすることで、概ね解決されてきたのです。

現在、舞台で使用されるLED Fixtureはなめらかなフェードが可能な4色、5色に加え、マスターインテンシティーとズーム、ストロボなどのパラメーターで構成されるものがスタンダードとなり、すでに多くの人の意識は、基本機能以外の部分に向けられ、ムービングするウォッシュライトか固定タイプかの違い以外に、メーカーもユーザーもより目新しい何かを求めて加熱しているのが現状のLEDマーケットではないでしょうか?

しかし、已然としてLEDには、色のばらつきの問題以外に、色と色のフェードチェンジを行った際に、意図しない色が出現するなど基本的な部分に大きな問題点が残されています。この誰もが諦めていた部分にメスを入れるとともに、出力されるカラーの正確さについて真剣に取り組んだのがLumonic(ルーモニック)という企業です。


つづく






2012年10月13日土曜日

カラーミキシングの考察 Part 2


 舞台照明で利用される光源は、まだハロゲンランプも数多く残りますが、主要な部分では、かなりムービングライトフィクスチャーのHIDランプに置き換えられたようにも思えます。ここでは、舞台の主要な照明器具となったムービングライト、インテリジェントライトが利用する光源であるHIDランプの特性から、光の特性を決める色温度や演色性などについて考えます。


色彩を決定する光の波長

 我々が知覚する色は多くの要素に依存します。これは例えばその光源、光学系、そしてその光源を覆うフィルタとそのフィルタメカニズムまたはその物質のもつ波長により着色されて見えることを指します。本来われわれが、色を色として認識するというのは、物体に光が当たって反射したとき、その反射する波長がどの帯域によるかということです。例えば白色光によって照らされたバナナは黄色く見えます。これは黄色以外の色をバナナが吸収し,反射しないということでもあります。

逆に光源を黄色に変化させるには、フィルタは黄色以外の他の色をブロックすることによって、黄色を産み出します。どちらの場合も、黄色い波長は我々の目に届き、イエローとわれわれは認識するわけです。


(もしバナナに当てるその光源から黄色の波長が発生しない場合、バナナは黄色には見えません)

舞台照明業界において、今も数多くハロゲンランプが使用されますが、すでにムービングライトフィクスチャーが多数を占めるようになっており、特にカラーミキシングシステムにおいて、ムービングライトは主要なデバイスになっています。そしてこのムービングライトに利用される光源は、低電力でより高出力が得られるハイインテンシティーディスチャージランプ(HID)が最も多く使用されます。






HIDソースは、2つの電極の間のアークによってガラスチューブの中にミックスされたガスに電流を通すことによって、光を作り出します。光の色はチューブ中のガスとガス圧力、タイプおよび量の両方に依存します。こうして得られるHID光源の波長は太陽光や白熱電球のような連続的なスペクトラムではありません。

それは特定のガスの特性によって多くの鋭いピークから構成された波長です。この波長のピークをHIDランプのチャートから眺めると、可視光における波長帯域の中で均等にそのピークが存在するのがわかります。このピークを均等に配置することで実際には連続的ではない波長を準連続スペクトルにして近づけているといえます。そしてこの波長の分布によってそのランプの特性を決める2つの要因、色温度、演色性(カラーテンパチャー、カラーレンダリングインデックス)が決まるのです。

色温度

色温度とは、光のもつ色合いがどれだけ白いかを表すもので、例えば色温度が高くなると光は、やや青白くなり、逆に下がると黄ばんだ白に見える。この色の白さの度合いをケルビンという単位で表現したのが色温度です。われわれがよく目にするHMIMSRといった光源の場合、ほぼ共通して4500K〜6500Kの範囲に色温度を持っています。


演色性

物の見た目、外観はそれを照らす光の色に依存します。よって光源のカラーバランス品質を決定するためには、物体が光のもとにどう見えるかを見積もる方法が必要となります。
カラーレンダリングインデックスは、光源がどれくらい照射物の実際の色を再現しているかを表現するものです。

詳しくは8種類の定められた物体色に試験する光源と基準になる光源とを照らし比べて8種の色違いの度合いを平均し、100から引き算して得る平均演色評価数Raを用いています。そのほかさらに厳密な評価にはR9~R15を用います。

CRIは100に近づくほどよく、多くのムービングライトに使用されるHIDソースはほぼ70~95のレンジ内にあります。

レンズとリフレクターによる影響

ランプなどの光源だけではライトとして役に立ちません。その生の出力は、リフレクターによって集められてレンズを通して照射される必要があります。現在、非常に多く使われるコールドミラーは高出力のランプをコンパクトなフィクスチャー内に搭載することを可能としました。コールドミラーは、可視光をだけを反射し、目に見えない赤外線などの波長を反射しません。

赤外線のエネルギーつまり 熱はムービングライトフィクスチャーにおいては非常に大きな問題であり、コールドミラーの使用はそれをカットすることでこの熱の管理を容易にしました。しかし、このシステムが犠牲にする赤外線のスペクトルは赤という色を持つ波長であり、このミラーを使うことによりその波長がカットされるためにムービングライトは濃い赤が出せなくなる問題もはらんでいます。また、レンズも色の温度を低下させたり、グリーンの波長をカットすることで、光の品質にかすかに影響を与えています

ほとんどすべてのフィクスチャーの出力は使用する光源であるHIDソースに頼っており、このランプのカラー特性は中に封入されるガスによって決定されます。
この製造プロセスにおける誤差はガスの封入に影響し、そして、ランプの温熱環境の変化は光の量と品質の両方に影響することがあります。

では、もしすべてのランプが同じであったとして、それでもめったにフィクスチャーは同じ出力にはなりません。それはそのフィクスチャーモデルとミラーコーティング、レンズの材料でさえ作り出される光のキャラクターを顕著に変えることができるからです。

このような状況では、HID光源を利用するCMYカラーミキシングでは、どんなシステムを利用しても同じような出力は得られないでしょう。そこで次に登場したのがRGBのカラーミキシングとなるLED光源です。


つづく





カラーミキシングの考察 Part 1




 照明のためのカラーミキシングシステムは、ムービングライトに搭載されたCMYの減法混色の仕組みでクロスフェード可能且つ数多くの色を生み出すことが可能となり、照明家は色に関する自由を手に入れたように思えました。


しかし、カラーミキシングに関しては、さまざまな問題点が残されており、それは今のLED時代に入ってもまだ、完璧とは言えないものがあります。

私は、今年、劇場の照明家にとって、もしかするとこれまであったカラーミキシングシステムの解決を図るコンセプトになるかもしれないLumonicのilumoというFixtuteに出会いました。このかつてないコンセプトについて考えるにあたり、2004年、私が日本照明家協会雑誌の編集委員をしていた頃、同誌にLighting & Sound 誌にあった記事を日本語に編集してご紹介した内容を元に、過去のカラーミキシングについて振り返りながら、光で生み出す色について考えてみたいと思います。

 Lighting & Sound  2004年ごろの記事


 求める色を自由に表現するというのはアーティストにとって必要不可欠であるように、これは照明デザイナーにとっても非常に重要な要素であるといえます。芸術家は自身の求める色を作り出すために絵の具を混ぜることができますが、これは照明デザイナーにとっては非常に難しいことになります。多くの照明家が望むのは、ステージセットやそのムードに合わせ、客席やコントロールコンソールの前にいながらにして自由に設定できることでしょう。この照明家の夢をかなえるべく、リモートコントロールのカラーチェンジャーが登場したのは1970年代の終わりごろで、実用化されたのはワイブロンのカラーマックスが最初ではなかったでしょうか?


 











その後、さまざまなカラースクローラーが登場することになるわけですが、ここには1つ問題がありました。それはカラーの数にリミットがあったということです。カラースクローラーはカラーフィルターをスクロール状にしたロールを動かして色を変えるわけですがそこには搭載できるフィルターの枚数(長さ)に制限があり、すべての色を自由にとはいきませんでした。

そして、オートメイションライティングの到来です。このカラーミキシングシステムを持つまで、われわれは20年の歳月の中さまざまな発明、そして特許とともに何百万ドルもの費用をかけてきたのです。果たして今、われわれはその夢の実現に到達したのでしょうか?20年余りの歳月をかけ、どんな色であっても色から色へのスムーズなフェード効果を得ることができるのでしょうか?







あるひとつの側面であるカラーミキシングを搭載したフィクスチャーの今日の数から言えばそれはイエスと言えるかもしれないし、一方、なぜ同じシステムを持つフィクスチャー間で、なぜ色が同じでないのか?また、同じDMXレベルであるにも関わらず例えば ”なぜ同じラベンダーが作り出せないのか”といった問題もあります。
 


今日、オートメイテッドフィクスチャーのカタログを見ればそこには1670万色のカラーミキシングが可能だとあります。これは驚異的な数であり、この色数であればLEEROSCOそのほかほぼすべての色見本にあるようなカラーフィルターの色はすべて再現できると考えてもよさそうです。しかしカラーミキシングの機構は複雑且つ多種多様であり、より多くの視点からこの問題を見ていくことでこの答えを出したいと思います。


つづく

2012年10月9日火曜日

色彩の夢を実現したLED Fixture誕生














 すべての色を自由にそして即座に表現するというのは、カラースクローラーの時代からの、照明家の求める夢であったかもしれない。それはアーティストが、自由に絵の具を混ぜ合わせて自分の求める色を作り出せるのに対して、照明の場合、それは非常に困難であったためだ。

この事は、ムービングライトに搭載されたCyan、 Magenta、 Yellowの3色のフィルターを使った減法混色によるカラーミキシングにおいても、そのカラーフィルターの差異やまたHID光源そのもののばらつきで、均一且つ正確なカラー混合というのは難しく、またその色を異なる器具を越えて統一することは不可能だった。そしてこの正確且つばらつきのない美しいカラーミキシングという果てしない夢は、LED時代全盛の今でもまだ、生み出すのは困難を極めるのです。

ここに紹介する次世代のLED照明器具とも言えるilumoは、現代のLED時代においても難しいばらつきのないメーカーの機種を越えたカラーミキシングを、ユーザーによるRGB個々の調整を可能とすることで解決し、ソフトウェア技術で正確なカラーキャリブレーションを実現しています。これまで、さまざまなLED機器が登場する中、単純なRGBWの見た目の加法混色以上に、カラーの概念をCIEの定義するカラースペースの 再現にまで高めたカラーキャリブレーションというものがあったでしょうか?

このiLumoというFixtutreは、単純な4色のカラーミキシングという使い方以外に、XY座標で指定するCIEのカラースペースの再現や、個体別に原色のRGBを調整することで、他社製品のFixtureが生み出すカラー にマッチした色を生み出すカラーキャリブレーション機能を搭載し、LED素子における色の不一致を解決することが可能です。

また、RGBで生み出すホワイトの色温度を器具のデフォルト値として登録することが可能で、正確な色温度に調整したカラーキャリブレーションも可能です。

(色温度をDMX制御する場合は、これはDMXパラメーターで制御するため、モードによっては無効になる)

一般にLED素子のばらつきはマネージメントができず、その意味で乱立するFixtureのどれを選択しても購入時期によっては、個体差が発生するほか、当然ながら舞台で多種多様な機種を使用する場合において、それぞれのFixtureの色をマッチさせる事は不可能でしたが、劇場のエンジニアや、色にこだわるデザイナーにとって、このFixtureはカラーミキシングの未来を実現したものになるのではないでしょうか?

今まさにLED全盛の中、MRTEでは、このカラーミキシングの革新的な概念をもつFixtureに出会い、これを取り扱うことを決定いたしました。

下記詳細

 http://www.mrte.jp/html/nc.html





2012年10月5日金曜日

映像と照明 境界線上のアリア

 積み重ねられた歴史の中で構築された仕組みが、技術の進歩とともに古くなるという現象が、舞台における映像セクションの不確かな立ち位置に垣間みる事ができる。

今、旧来のプロジェクション装置がデジタルプロジェクターへ置き換えられる可能性が高まる中、長い劇場の歴史において、これまで存在しなかった映像セクションの確立が求められているのは確かではないだろうか?

舞台における映像分野は、比較的新しいせいもあり、多くの劇場では映像という独立したセクションではなく、音響セクションの扱いという形が多数を占める。例えば、イギリスの場合、ナショナルシアターでは音響セクション、ロイヤルオペラハウスも同様、しかしロイヤルシェークスピアカンパニーでは、照明セクションらしい。
(Catalyst のRichard 談 )

しかし残念ながら、今の映像の効果は、より美術的であり、また照明要素が強く、より強く演出に関わるセクションに育ちつつある。そして、その分野では、デジタルコンテンツに対する知識、プロジェクションに関する知識、そしてメディアサーバーのような装置を利用する場合には、DMXに関する知識も求められる。よって、これらは現在の音響セクションに内包されるものではなく、新たなセクションとして確立すべきなのである。

この映像という言葉でくくられるこれまでの映像業界は、映画であったり、コーポレートイベントにおける映像機器レンタルや大型コンサートのカメラ映像を映し出すための大型LEDスクリーンなど、映像を効果として使うというよりは、カメラの映像やPVをきれいに見せることに重きが置かれており、その分野の人にとって劇場で行われる演出は、やや異質な世界にうつると想像する。

その意味では、 いわゆる映像業界の常識が通用しない世界が舞台であり、単に映像素材をよどみなく見せるのではなく、映像を使い舞台を魅せる事に、皆の価値基準は集約される。それは、これまでの映像機器のオペレーションでは不可能な事もありえるだろう。故に、この分野はこれまでにない新しいタイプの人材を要求するのである。この状況は、世界のどの劇場でも、日本と同様、難しい状況に置かれている。

今後、このセクションに関わる人は、映像業界からもしくは照明業界の両方から誕生するのかもしれない。そして、肯定的に捉えるならば、彼らはメディアサーバーを使いこなし、映像をより舞台の情景にとけ込む効果としてデザインできる人々になるのだろう。




2012年9月2日日曜日

ネットワークトラブル解決セオリー Part1

 最近、劇場設備では、音響も照明もネットワークシステムが普及してきています。こうしてネットワークシステムが普及していくにつれ、舞台技術者は、トラブルが発生した際の問題解決に関するテクニックを知る必要があると思います。

しかし、仕組みがネットワークだからといって、何か特別な能力が必要かというと、そうではなく、トラブルが発生する時というのは、意外とシンプルなメソッドで解決できることが多い。それは従来のシステムとさほど変わりはなく、また逆にネットワークだから故、状況判断のツールが数多く存在するという点は、あまり理解されていない。

通信トラブルというのは、以下の3つの点に集約される。

1 通信経路不良による通信断絶(物理的な要因)
2 コンソール機器側の設定等(コンソールなど、信号の上流で発生する問題)
3 最終出力となる装置の問題 (スプリッター装置、NodeやDSP)

さらに、ネットワークのシステムでは、ここにネットワークIDの違いと、ブロードキャストストームの発生という可能性が加わります。(VLANなどの事例は、ここでは除外)

ここでは、本当に簡単な、しかし基本的な確認事項を改めて列記します。
まず基本事項として、物理的に接続できないのか?それとも接続されているのだけど、データが取り出せないのか?それとも正しく装置が動作しないのか?まったくデータすら到達していないのか?そうした事をクリアする必要があります。以下、簡単な接続の確認

はじめに。。基本編

状況を確認し、装置が正しく動いていないのか?それとも、まったく動かないのかを確認します。もしフリッカーなどのあおりが起こる場合はまた別の要因を考える必要がありますが、ここではまったく動かない状況を想定します。

チェックポイント1
 
スイッチングハブのポートはリンクアップしてるか?

卓や各種装置は、FOHとステージ側とそれぞれにスイッチングハブを使ってつながっていると思います。そのスイッチングハブにつながったポートを目で見て、ポートのランプが点灯しているかどうかを確認します。なんらかのデータ通信が行われていれば、ポートのランプが点滅しているはずです。それが点灯すらしてなければ、ポート不良が考えられます。これは各種装置のネットワークカード側もチェックすべきです。またデータが送られているのに、点滅がないとなると、通信経路になにか問題があるかもしれません。まずはこの物理的な接続を確実にします。

チェックポイント2

装置にあるモニター機能で確認

 個々のポートのリンクアップが目で確認できたら、通信する機器、例えば卓やDSP装置、Node装置やPCソフトウェアなどが持つ機能を使って、確認できる事がないか確かめます。例えば各種装置の液晶表示などで、相手先の装置の情報が確認できるとか、メディアサーバーなどでは、アートネット装置の名称が見えるとか、なんらかの装置の機能を使って確認します。またマネージメントスイッチを利用している場合、ウェブブラウザーでアクセスすることで、状況確認などが可能です。

(LuminexのGigaCore14Rのウェブサーバー機能は、2012年9月以降の新しいバージョンで対応)

チェックポイント3

スニッファーソフトや各種ソフトウェアを利用する

装置にモニターする方法が見当たらない場合、もっとも正確な確認方法が、モニターソフトを使う方法です。ネットワーク上にコンソールからのデータが送られて来ているかどうかを確認します。これはスニッファーソフトのようなものを使うのですが、照明さんであれば、アートネットモニターのソフトなどを使えば、一目で各種機器が見えているか又は、DMXデータが表示できます。アートネットモニターソフト

一般的にネットワーク問題の解決第一歩は、本来、Pingを打つ事から始まります。通信チェックをしたい位置から、おそらく舞台では、コンソール側になりますが、ここの拠点から、目的の装置に対してPingコマンドを打って、通信が可能かどうか?を確認します。
今では、マルチPing用フリーツールなどもあるし、またMACのユーティリティーなどには、Pingツールが用意されています。もし上記のモニターソフトがあれば、チェック3が可能ですから、このPingの意味はありません。しかし手元にモニターソフトすらない場合、全体の状況を確認することが重要です。この通信不良は、一定箇所でのみ起こっているのか、ネットワーク全体で発生しているのか?

チェックポイント4

接続をシンプルにする

 もし、全体に問題が起こっているなら、すべての拠点で同様の問題がおこっているはずです。そうした場合、幹線に問題があるか?それとも、コンソールそのものが問題を起こしているのか?しかしネットワークの場合、ブロードキャストストームの可能性がありえます。これはリングプロトコルやスパニングツリープロトコルに対応していないスイッチ同士をループ状に接続したとき、そこで起こるブロードキャストストームがネットワークシステム全体に波及します。

もし、複数の拠点が存在するなら、一度、接続をシンプルにコンソールと1個のノード間の接続のみにして、状況を確認します。もしそれで機器が正常に動作するなら、もう1つの拠点を接続して状況を確認します。接続を増やして行く段階で問題が発見されれば、そのスイッチでループが発生している可能性があります。


これらチェック1〜4は、従来のシステムでも似たような事を行ってきたと思います。通信トラブルが発生した場合、実際に行うことは同じような基本的行動であり、観察が重要です。IPの設定とか、ネットワークならではの特別なチェック事項というのはそれほど多くありません。そしてネットワークのシステムでは、ソフトウェアを利用して、状況確認する方法が数多く存在します。照明ではやがてRDMが普及する頃には、照明機器のトラブル状況ですらも、ソフトウェアで確認することができるようになります。こうしたソフトを活用し、素早く状況を確認していく事が重要です。






2012年7月18日水曜日

劇場に求められる映像向けインフラ

2000年代半ばから進む映像コンテンツの舞台演出への応用は、スライドプロジェクションのような静止画ではなく、高輝度なプロジェクターを使った動画コンテンツによる演出であり、以前よりも映像分野の専門知識をもつセクションの存在価値が高まりつつある。 そしてまたこの映像演出は、現代の舞台演出にとって、なくてはならないものになりつつある。

しかし映像を使う演出手法自体は、劇場空間において、決して新しいものではなく、動画とは言え、演出用途としては、やはりスライド演出のその延長線上にあって、それは照明効果としての映像であると言える。例えば、2011年にアメリカで行われた次のような演出も、照明効果としてプロジェクションを活用した例で、

 http://livedesignonline.com/news/2100_oscar_projections_030311/

その意味では、プロジェクションマッピングと、もてはやされている映像演出も、舞台では舞台美術への照明効果を映像で代価する手法として、パニープロジェクションやPIGIを利用した演出と大きな違いはなく、手法そのものよりも、技術的な進化が注目されるところだろう。

 さて、こうした映像演出が一般化する昨今の舞台演出において、それを受け入れる劇場においては、より自由に映像をディストリビューションできるインフラが必要になることは間違いない。そしてそのインフラとしてもっとも将来性のあるものが、光ファイバーとなる。

 照明のネットワーク化が進む、最近の劇場照明システムの考え方は、信号の劣化が少ない光ファイバーで、長距離を延長し、できるだけ照明機材の設置される各ポイントに近い位置まで、幹線を敷設することが合理的である。そして接続ポイントとなる光ポートをもつネットワークスイッチの数が多ければ、それだけカッパーケーブルによる延長は短くなるうえ、カバーできる範囲も広くなる。(カッパーケーブルによる延長では100mという限界があるため)

その意味では、照明機材を仕込むポイントに、拠点となるスイッチが配置される事が望ましい。それは例えば、シーリング、フロント、ギャラリー、ポータル、奥舞台、すのこ、上下の袖などになるだろう。しかしこれは照明だけでなく、映像にとっても最重要なポイントになる可能性が高い。なぜなら将来のプロジェクションライティングを考えると、同じ位置からプロジェクターを照射する可能性が高いからだ。

こうした事から照明のネットワークインフラにおける光ファイバーは、映像を考慮して、マルチコアで配線し、スイッチの拠点各所に、終端処理をして立ち上げておく事で、いつでも、どこからも映像送出が可能となり、将来的には映像機材を増設する際にも使いやすいものに変るだろう。

これは舞台のビジュアルデザインという側面で、映像部門を捉えた時、未だ劇場では確立されていない映像セクションが、照明セクションと強く結びつくことを意味している。つまり、照明のインフラを構築するとき、そこに映像のことを考慮するのは、照明によって意味があるということである。

ただしかし、ここで話す映像は、あくまで演出として映像を活用する事を考慮した場合の話であり、単純に映画やセミナーのコンテンツをスクリーンに照射するような映像の使い方しかしないのならば、必要のない設備だろう。あくまで、演出として映像をフルに活用する可能性をもった劇場の話である。





2012年5月5日土曜日

マルチプロトコルの未来

日本の舞台照明の世界では、未だにDMXに代わる統一プロトコルは何になるか?という議論が聞かれるが、実はそうした議論の意味は、今ではかなり薄れている。見方を変えれば、すでに照明の世界はイーサネットというプロトコルで統一されており、その上でどのプロトコルを使おうと、システムに大きな変化はないのである。そして今の状況はけっして統一されることなく、さまざまなプロトコルが混在したまま続くだろう。

先のエントリーで、PLASAが行ったカンファレンスについて触れたものの、
本気度を増すRDM&sACN]

これとて、普及促進の意図で行われたものであっても、すでに世界にばらまかれた各種のプロトコルを統一するような影響力はない。まちがいなく今ある各社のプロプライエタリープロトコルも、またすでに普及したいくつかのライセンスフリーのプロトコルも残り続けるだろう。その理由は、概3つ。

1 もはやDMXを扱うのは照明だけの世界ではなく、すでに各種のイーサネットベースのプロトコルが他の分野にまで広がっている。
彼らは照明業界のプロトコル統一への関心は薄い上、照明業界の影響が及ばない。そしてこれら機器を制御する必要がある限り、各種のコントローラは複数のプロトコルをサポートするしかなく、ネットワーク上では、異なる複数のプロトコルが利用される。

2 すでに拡散した各種のプロトコルなどを一掃するほどのインセンティブが新しいプロトコルによって生まれることはない。なぜならそのベースにあるのはDMXであり、新しいプロトコルを実装することで得られる利点は少ない。

3 現代のネットワークシステムはイーサネットで接続される機器の上でマルチプロトコルの動作を許容する。今ではほとんどの照明卓がマルチプロトコルを実装しており、ユーザーは任意のプロトコルを選択するだけでよい。そしてどのプロトコルが最適か?という視点ではなく、使う機器がどのプロトコルで動くか?という視点でプロトコルを選択する。おそらく世界中の各種機器が1つのプロトコルを選択することはなく、単にイーサネットのポートを搭載し、その時に実装可能なプロトコルをサポートすることになる。

こうした機器が混在することによる弊害は、現在のネットワーク機器のVLAN機能で、ほとんどないに等しい。同じネットワーク内にArtnetやsACNのほか、MAnetなど、各種のプロトコルを同時に利用することも可能である。やがてはこのVLANもプロトコルに応じて自動で行われるようになるだろう。そうなったとき、プロトコルが1つに統一される必要もないことに多くの人は気づくだろう。

1つのネットワークに異なるプロトコルを流してもまったく問題はなく、受け取る機器が、そのプロトコルに対応していればいいだけなのだ。つまり送信受信を行う機器が、複数のプロトコルに対応するだけでよくて、そのほうがユーザーメリットは大きいことは間違いない。それ故に各社のコンソールは、複数のプロトコルを実装するのである。



2012年4月23日月曜日

LED 向けのLeeフィルター














LeeフィルターをLEDのクールホワイトで使用すると、タングステンランプの色とは完全に異なる発色になるのを解決するLED ( 6000K )向けの新作が登場しました。


CL104 - Cool LED Deep Amber
CL105 - Cool LED Orange
CL106 - Cool LED Primary Red
CL115 - Cool LED Peacock Blue
CL116 - Cool LED Medium Blue Green
CL117 - Cool LED Steel Blue
CL126 - Cool LED Mauve
CL139 - Cool LED Primary Green
CL147 - Cool LED Apricot
CL158 - Cool LED Deep Orange
 





ETC- SourceFourの新たな時代
















Source Fourという名称は、フィラメントが4つあるHPLランプを元に開発した経緯から名付けられたと聞く。

ETCのスタンダードなプロファイルスポットも、いよいよLED化となり、劇場の照明器具に本格的なLED時代が到来したことを感じさせます。

Source FourのLEDタイプは、カラーのLustr+とタングステンカラー、そして放電管カラーの3種からなり、Lustr+は名前からもわかる通り、7色のLEDで構成される。

すべて大きさも見た目もパーツも光学系もまた照射サイズもスタンダードなソースフォーと共通で、LED化されることで、消費電力を抑えるという大きなメリットがあります。
明るさは、タングステンタイプのLEDソースフォーだと若干ですが、暗くなりますが、色や演色性などは、かなり高いレベルをキープしています。

ETCはこの色温度や演色性など、照射した際の物質が放つ光が正しい色で見えるようにするという点に非常にこだわっており、展示会においても、この正しい色が再現できるという点を強調していました。

 http://www.etcconnect.com/products.family.aspx?ID=30031






2012年4月5日木曜日

本気度を増すRDM&sACN

未だその実態が正確に理解されているとは言いがたいRDMだが、これはあくまでデバイス管理のための仕組みであって、単一の制御プロトコルではない。あくまでデバイスの情報をコントロール側へ返信させたり、機器のパラメーターやモードなどを変更したり、情報を表示したりする作業を、そのプロトコルの存在を意識せずとも使える仕組みである。

RDMはDMX512インフラ上でも使える上に、またイーサネットベースのプロトコルになった場合でもその中に内包される形で機能することができる。そして制御信号のインフラが、DMX512ではなくイーサネットのインフラになるとき、DMXインフラとは異なり、信号を止めることなく通信ができるため、非常にイーサネット上で取り扱うのに相性がいい。

というのも、ネットワークシステムの場合、送信と受信が完全に分離されたフルデュプレックスがスタンダードになったため、コンソールからDMXデータをArtnetやsACN等のイーサネットベースのプロトコルで送信しつつ、情報をバックさせることが可能であり、それを受け取る側がソフトウェアである以上、イーサネットベースのほうが受信も簡単であるためだ。

物理的な接続の仕様は、イーサネットプロトコルに任せ、またそれをアプリケーションに届ける仕組みもTCP/IPに任せることで、余計な仕組みをつくる必要がなく、sACNやArtnetには、最初からRDMデータをやりとりする為の仕様が決められている。よって、それらプロトコルを使うだけで、あとはRDMを受信してそれを表示するためのソフトウェアだけをつくればよいことになる。

こうした効果をより享受するためには、多くのメーカーの互換性や、ユーザーの認知が必要で、また普及を促進するキラーアプリケーションも重要になる。そこで、今月、RDM/sACN Plugfestyと題したConference  が開催される。

これは、全世界の各メーカーやユーザーにアナウンスされており、RDMとsACNの普及を目指して、各社の製品の接続性のテストや情報共有などをテーマにした集まりであると説明されています。わざわざアーティスティックライセンス社も賛同しているというコメントも紹介されており、このプロトコル普及に対するPLASAの熱意のようなものを感じ取ることができる。



2012年4月2日月曜日

ユビキタスなシステム

ユビキタスとは、それがどういうものかを意識せずとも使えるシステムや技術をさす言葉だが、劇場のネットワークシステムに求められる理想的な姿は、このユビキタスなインターフェースであり技術だろう。

今後、劇場における照明機器のチャンネル数は今以上に増大し、DMXインフラだけで対応するのが困難になることは、LED化が叫ばれる現状を見れば想像に難くない。しかしそれだけでなく、見方を変えれば、劇場こそネットワークシステムの恩恵を受けられる設備であるのだから、その効果を最大限に活用する意味でも、今後の劇場設備はネットワークインフラを充実させるべきだと思う。

しかし、これからのネットワークシステムは、過去にあったIT業界のおさがりのような、面倒なシステムではない。過剰なほどの空調設備に加え、設定をどうすればよいのかも判断がつかない難解な装置を文字通り「使わされる」のではなく、より簡単に使えるようになるのが、今後のネットワークシステムであり、ユビキタスなシステムの実現である。

Luminex社で販売されるネットワークスイッチ「GigaCore14R」は、そうしたユビキタスな装置、インターフェースを考慮したもので、ネットワークスイッチにありがちな面倒な設定はすべて自動で行われるように作られる。例えばリダンダントの設定なども、今までのように人が意図して設定するのではなく、自動で経路が計算され、またVLANのようなグルーピングもプロトコルベースで自動的に設定される。

こうした装置の登場は、これまで存在した難解で手間のかかるIT産業のスイッチを劇場から排除し、劇場のテクニシャンたちが、本来の仕事に専念しながらも、問題発生時や必要に応じて、自分たちの力でネットワークを運用することが可能となる。このユビキタスなシステムこそが、劇場のネットワークシステムに求められる重要な要素だと確信するとともに、また一歩、その実現に近づいたことを感じる。



2012年3月5日月曜日

オペラのステージセットを映像でつくる









 

AIDA Opens at Royal Albert Hall with Projection Design by Knifedge

写真:ET-Now より


昨年、2011年に国内でも、オペラ「ルサルカ」で映像を照明効果のように活用する例がありましたが、最近、ロイヤルアルバートホールで行われたオペラ「AIDA」においては、劇場のステージセットとなる背景を高画質な映像でデザインした例として注目です。

手がけたのは、ロンドンのクリエイティブ・エージェンシーKnifedgeで、Catalystメディアサーバーを利用し、20Kのプロジェクター6台をドライブしてカーブスクリーンに映像を照射しています。ショーの全体的なデザインにおいては、セットデザイナーとライティングデザイナーとともに協力して、製作したそうです。こうしたビジュアルデザインにおいては、従来の照明デザインとセットデザインだけでなく、プロジェクションデザインの新しいセクションが必要となり、各セクションとの連携が重要になることがわかります。

2012年2月22日水曜日

劇場向けブログスタート

株式会社マイルランテックは劇場向けの照明ネットワークシステムや映像システムに関する装置のご提供とまた、設計のお手伝いを行っております。

このブログでは、劇場設計に関わる方々や劇場で働く人のために、マイルランテックが得た情報の他、海外のニュースなどを抜粋して、ステージテクノロジーを主体とした話題をご提供します。

みなさまのお仕事の参考にしていただければと思います。