2012年5月5日土曜日

マルチプロトコルの未来

日本の舞台照明の世界では、未だにDMXに代わる統一プロトコルは何になるか?という議論が聞かれるが、実はそうした議論の意味は、今ではかなり薄れている。見方を変えれば、すでに照明の世界はイーサネットというプロトコルで統一されており、その上でどのプロトコルを使おうと、システムに大きな変化はないのである。そして今の状況はけっして統一されることなく、さまざまなプロトコルが混在したまま続くだろう。

先のエントリーで、PLASAが行ったカンファレンスについて触れたものの、
本気度を増すRDM&sACN]

これとて、普及促進の意図で行われたものであっても、すでに世界にばらまかれた各種のプロトコルを統一するような影響力はない。まちがいなく今ある各社のプロプライエタリープロトコルも、またすでに普及したいくつかのライセンスフリーのプロトコルも残り続けるだろう。その理由は、概3つ。

1 もはやDMXを扱うのは照明だけの世界ではなく、すでに各種のイーサネットベースのプロトコルが他の分野にまで広がっている。
彼らは照明業界のプロトコル統一への関心は薄い上、照明業界の影響が及ばない。そしてこれら機器を制御する必要がある限り、各種のコントローラは複数のプロトコルをサポートするしかなく、ネットワーク上では、異なる複数のプロトコルが利用される。

2 すでに拡散した各種のプロトコルなどを一掃するほどのインセンティブが新しいプロトコルによって生まれることはない。なぜならそのベースにあるのはDMXであり、新しいプロトコルを実装することで得られる利点は少ない。

3 現代のネットワークシステムはイーサネットで接続される機器の上でマルチプロトコルの動作を許容する。今ではほとんどの照明卓がマルチプロトコルを実装しており、ユーザーは任意のプロトコルを選択するだけでよい。そしてどのプロトコルが最適か?という視点ではなく、使う機器がどのプロトコルで動くか?という視点でプロトコルを選択する。おそらく世界中の各種機器が1つのプロトコルを選択することはなく、単にイーサネットのポートを搭載し、その時に実装可能なプロトコルをサポートすることになる。

こうした機器が混在することによる弊害は、現在のネットワーク機器のVLAN機能で、ほとんどないに等しい。同じネットワーク内にArtnetやsACNのほか、MAnetなど、各種のプロトコルを同時に利用することも可能である。やがてはこのVLANもプロトコルに応じて自動で行われるようになるだろう。そうなったとき、プロトコルが1つに統一される必要もないことに多くの人は気づくだろう。

1つのネットワークに異なるプロトコルを流してもまったく問題はなく、受け取る機器が、そのプロトコルに対応していればいいだけなのだ。つまり送信受信を行う機器が、複数のプロトコルに対応するだけでよくて、そのほうがユーザーメリットは大きいことは間違いない。それ故に各社のコンソールは、複数のプロトコルを実装するのである。